有名なマーケティングフレーム枠「4P」でも定義されているプロモーション活動はビジネスを拡大していくには非常に重要な領域です。プロモーション活動を通してユーザーに商品・サービスを知ってもらい自社コンテンツに集客することがまずは第一歩です。
集客する際に活用できる媒体は色々ありますが、大きく分けるとオウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアの3つであり、それを総称した言い方であるトリプルメディアを有効に活用していくことがビジネスを成功へと導くのに欠かせません。トリプルメディアの中でもペイドメディアはお金を投下することで媒体へ露出することができ自社のコンテンツにレバレッジを掛けて集客をすることができます。
しかし広告費を投下した施策は諸刃の剣であり、使い方を間違えるとただ広告費を浪費してしまうだけになりかねません。投下した費用以上に売上をあげるためには事前にしっかりとシミュレーションを行い、それに基づいたメディアプラニングをしていくことが重要です。費用対効果を最大限にするためのシミュレーションを行い、それに対してどうメディアプラニングを行っていくか紹介していきます。
メディアプラニングで検討すべき3つのメディア
メディアプラニングを行っていくために基本となる3つのメディア(トリプルメディア)をまずは抑えておく必要があります。3つのメディアは自社メディアを指すオウンドメディア、他社メディアに対して広告費を投下することで掲載できるペイドメディア、またSNSなどに代表されるアーンドメディアがあります。
この3つのメディアはそれぞれ特性が異なっており、その特性に合わせてクリエイティブを投下していくことで効率よくユーザーを集客していくことが可能になります。
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| オウンドメディア | 自社が保有しているメディアであり、自社顧客と非常に相関の高いユーザーにメッセージが届きやすい。しかし媒体の露出量はそのオウンドメディアで集客できている人数が限界である。 |
| ペイドメディア | 他社が保有しているメディアに対して費用を掛けることで露出をすることができるメディア。費用を沢山掛けることが出来れば出来るほど露出数が多くなるため集客できる人数に限界はない。 |
| アーンドメディア | SNSを始めとしたプラットフォームでユーザーが主体となり情報を発信することができるメディア。ユーザー通しでコミュニケーションが相互に行われることで顧客のリアルの声が反映され信頼度が高い一方、企業側でコントロールできないというリスクもある。 |
特性の違う3つのメディアに対して、特性に合ったメディア運用が出来ることで自社のビジネスを効率よくグロースさせていくことができます。
メディアプランニング方法
トリプルメディアを使ってプロモーション活動を行ってていくにあたって、まずは顧客獲得に費やせる許容コストと投資回収期間の把握を行ないます。許容コストや投資回収期間を把握する目的は、マーケティング利益の最大化であり、メディアプラニングを行う上での土台となります。許容コストと投資回収期間が整理できればそれに合わせて、トリプルメディアをどう活用して顧客を獲得していくのか計画していきます。
新規顧客獲得許容コストの把握
獲得できる新規顧客の数が多ければ多いほど売上をあげることが出来ますが、利益を最大化させるためには掛けられる費用を考慮する必要があります。新規顧客を獲得するのに掛けれるコストは新規で獲得した顧客から得られる利益より少なくなければ、黒字にはなりません。単純な計算式ですが、新規顧客1人獲得するのに掛けれる許容コストは下記で示すことができます。
新規顧客獲得許容コスト =< 新規1人あたりの利益
新規1人あたりの利益 = 新規1人あたりの売上 - 新規1人あたりの売上原価 - 1人あたりの費用
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 新規1人あたりの売上 | 新規で取引を開始してから終了するまでの期間に自社に対してもたらした合計売上高 |
| 新規1人あたりの売上原価 | 商品・サービスを作るのにかかる1人あたりの原価 |
| 1人あたりの費用 | 新規購入者を獲得するのにかかるプロモーション費用 |
新規1人あたりの売り上げ
新規1人あたりの売上は「Life Time Value」と呼ばれLTVと略すことが多いです。
このLTVがどれくらいになるか過去の販売実績データから下記の計算式を用いてLTVを算出することが可能です。
1人あたりのLTV = 平均購買単価 × 平均購買頻度 × 平均契約継続期間
1人あたりの費用
メディア集客にかかる費用は大きく分けて「変動費」と「固定費」に分けられます。
変動費は売上に比例して増減する費用のことでペイドメディアにかかる広告費などが該当します。一方で固定費は売上に関係なく発生する費用で、トリプルメディアを運用するための人件費などが該当します。
投資回収期間の把握
新規顧客獲得許容コストを整理することで1人あたりの獲得に掛けられるコスト(=上限CPA)を把握することができました。そしてそのCPAをベースに掛けた費用に対してどのタイミングで回収することができ、利益の創出につながっているかを整理することが投資回収期間を把握する目的になります。
プロモーション活動を行なっていく上で顧客を獲得するタイミングが一番コストが掛かりますが、売上が上がるタイミングは顧客を獲得したタイミングから購買を継続してくれる全ての期間から発生します。獲得に掛けたコストの回収目処を把握することでどれくらいの顧客を獲得することで利益を創出できるのか、新規顧客獲得許容コストを上限にシミュレーションをしていきます。
投資回収期間 = Nヶ月の累積限界利益(Nヶ月売上 × 限界利益率) = 0円
投資回収期間の把握を行うためには限界利益を理解する必要があります。

限界利益とは売上から変動費を引いたものであり、限界利益により固定費を賄えたときが営業黒字になります。また売上高の構成比が固定費と変動費のみで占められるポイントが損益分岐点であり、その点を超えると営業利益が生じていきます。
そのため損益分岐点に到達する販売数が最低限必要な販売数(CV数)であり投資した金額を回収できる人数になります。
必要販売数(CV数) = 固定費 ÷ 1人あたりの限界利益
一般的には販売数が増えれば売上が増えます。そして売上が損益分岐点を超えれば営業利益が生じますので、限界利益が増えていきます。そのため限界利益を増やすためには、変動費を上手く使い損益分岐点を超える販売数を計上する必要があります。
よって限界利益を最大化するためには、変動費をかけて新規顧客を獲得することと獲得した顧客からリピートに転換する割合「Fn転換率」を増やしていくことで販売数を増やしていくことができます。
Nヶ月(N回)累積限界利益 = F1限界利益(F1売上単価 × F1限界利益率) + F2限界利益(F2売上単価 × F2限界利益率 × F2転換率) + F3以降限界利益( F3以降累積売上 × F3限界利益率 × F3転換率)
新規で獲得した顧客のリピート数が増えれば累積限界利益は増えていきます。Nヶ月(N回)は平均契約継続期間(平均購買頻度)になり、過去の実績からNが何ヶ月(何回)になるかを当てはめて計算を行っていくことで累積限界利益を算出できます。
| F1 | F2 | F3 | F4 | ・・・ | FN | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 顧客数 | 1,000 | 300 | 240 | 192 | ・・・ | 30 |
| 転換率 | 30% | 80% | 80% | ・・・ | 90% | |
| 単価 | 1,000円 | 4,000円 | 5,000円 | 5,000円 | ・・・ | 5,000円 |
| 売上 | 1,000,000円 | 1,200,000円 | 1,200,000円 | 960,000円 | ・・・ | 150,000円 |
| 変動費 | 3,000,000円 | 600,000円 | 0円 | 0円 | ・・・ | 0円 |
| 累積限界利益 | -2,000,000円 | -1,400,000円 | -200,000円 | 760,000円 | ・・・ | FN-1累積限界利益+150,000円 |
上記の表はあくまで一例ですが、1,000人の顧客を300万円の変動費で獲得、60万円の変動費で転換率の向上をシミュレーションした数になります。その場合、4回のリピート購入で投資額は回収することが可能になります。
新規顧客獲得開始時には獲得のための広告の投資コストは売上以上の金額になるため限界利益はマイナスでスタートし、リピート売上により限界利益がプラスになっていきます。投資回収期間を短くすることができればより早く限界利益を得れますが、投資額が大きければ売上も大きくなります。Fnの転換率などを考慮し投資回収期間をシミュレーションすることでいい塩梅を整理することができるでしょう。
メディアプランの作成
新規顧客獲得許容コストと投資回収期間を把握することができれば、目標のCV数や上限CPAが整理されているかと思います。目標のCV数を上限CPA内で達成するためにトリプルメディアのどの媒体にリソースを割くかプラニングしていきましょう。
メディア選定
メディアの種類は大きくオウンド・ペイド・アーンドと3種類ありますが、その中に個別毎のメディアがあり、同じ分類でもメディアの特徴は異なってきます。またメディアのアプローチ方法はPUSHとPULLの2種類に分かれており、PUSHはユーザーに対して発信側から通知するメディアに対し、PULLはユーザー側から能動的に情報を受信するメディアになります。各メディアの費用対効果を考慮して、どのメディアに入稿していくかまずは選定を行います。選定の際のポイントは下記3点です。
- メディアの選定手順はオウンドメディア→ペイドメディアの順番で考えることで、自社でアプローチできない顧客をペイドメディアに頼るようにする
- アーンドメディアは企業側ではコントロールできるメディアではないためメディア選定から外す(口コミキャンペーンなどアーンドメディアの活用を促す施策の場合は外さない)
- 各メディアでアプローチできるセグメント情報を整理し、各メディア毎の役割を明確にすることでメディア間のカニバリを極力無くす。ただし各メディアでアプローチできる最大人数や平均CV数などを把握して、メディア間のカニバリを許容する場合はその範囲を決める
メディア例
世の中に溢れているメディアの種類は沢山ありますが、実際に実務で使用するメディアはある程度固定化されていると思います。メディア選定をする際によく使うオウンド・ペイド・アーンドを整理すると下記になってくるでしょう。
| メディア分類 | アプローチ分類 | メディア名 | アプローチ可能セグメント | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| オウンド | PUSH | メールマガジン | 配信許諾を取得しているユーザー | 自社のメールマガジンを購読しているユーザーに対してメールマガジン形式の文章を配信することが可能 |
| オウンド | PUSH | ブラウザ/アプリPUSH通知 | 通知許諾を取得しているユーザー | 通知を許諾しているユーザーに簡易的な画像と簡易的な文章をPCやスマートフォンの画面上に通知を送ることが可能 |
| オウンド | PULL | サイト/アプリ掲載バナー | サイトを閲覧しているユーザー | 自社のサイト・アプリを閲覧しているユーザーに対して告知バナーを掲載しておくことで、興味あるユーザーにアプローチすることが可能 |
| オウンド | PUSH/PULL | SNS | 自社SNSをフォロー・閲覧しているユーザー | 自社のSNSをフォローや閲覧しているユーザーに対して動画・画像・音声を使って情報発信することが可能 |
| ペイド | PULL | マス広告 | マスメディアを閲覧・購読しているユーザー | テレビやラジオ、新聞や雑誌などに掲載される広告。不特定多数の視聴者、読者へ向けた「マス」向けの広告で見ている人にアプローチすることが可能 |
| ペイド | PULL | セールスプロモーション広告 | 不特定多数 | 購買意欲の向上と購買行動への促進に重点を追いた広告。ダイレクトメール、折り込みチラシ、同封広告、会員誌広告、交通広告などが該当し広告を見ている人不特定多数にアプローチすることが可能 |
| ペイド | PULL | ネット広告 | インターネットメディアを閲覧・購買しているユーザー | インターネット上にあるホームページ、ブログ、メール、アプリなどに掲載される広告。広告をクリックすると広告主のサイトやキャンペーンページなどへアクセスすることができユーザーにアプローチすることが可能 |
| アーンド | PULL | SNS | SNSメディアを閲覧しているユーザー | SNSを使っているユーザーが自社製品・サービスに対して情報発信を行なっていて、その情報を閲覧しているユーザーにアプローチすることが可能 |
| アーンド | PULL | 口コミサイト | 口コミサイトを閲覧しているユーザー | 口コミサイトにユーザーが掲載している自社製品・サービスに対しての情報を閲覧しているユーザーにアプローチすることが可能 |
| アーンド | PULL | 個人ブログ | 個人ブログを閲覧しているユーザー | 個人ブログにブロガーが掲載している自社製品・サービスに対して情報発信を行なっていて、その情報を閲覧しているユーザーにアプローチすることが可能 |
メディア別獲得シミュレーション
メディアの選定ができたら選定したメディアからどれだけユーザーを集客することができ、顧客にコンバートできるかをシミュレーションしていきます。
各メディアの特性や対象となるターゲットによって媒体別のCVRは異なっていくかと思いますが、参考になる過去実績があれば、シミュレーションの参考値として利用することができるでしょう。しかし全ての過去実績が手に入るということは稀なため、シミュレーションを行う担当者の経験値や利用するメディアに対して詳しい方にヒアリングを行いつつシミュレーションを作っていくと良いでしょう。
| 分類 | メディア | 配信セグメント | 変動費 | CV数 | CPA |
|---|---|---|---|---|---|
| オウンド | メールマガジン | 許諾者ALL | ¥0 | 200 | ¥0 |
| オウンド | サイト/アプリ掲載バナー | サイト閲覧者のユーザー属性 | ¥0 | 100 | ¥0 |
| オウンド | SNS | フォロワー属性 | ¥0 | 50 | ¥0 |
| ペイド | マス広告 | A地方 | ¥2,000,000 | 350 | ¥5,714 |
| ペイド | ネット広告 | サイト訪問履歴なし | ¥1,000,000 | 300 | ¥3,333 |
選定したメディアをシミュレーションした結果、目標CVに到達できなそうな場合はメディア選定に戻り他メディア配信も検討すると良いでしょう。また目標CPAの中で最大限に獲得できるシミュレーションを作っておくとメディア配信後思ったようにCV数を獲得できない場合にどのメディアに追加で配信を行うかスムーズな運用ができるため、不測の事態に備えて段階的な配信シミュレーションも作れると理想的です。
まとめ
プロモーション施策は商品やサービスをグロースしていくにあたって非常に重要な取り組みの一つです。そのプロモーション施策を成功に収めるか失敗に終わらせるかは計画次第です。しっかりとシミュレーションを行いトリプルメディアの特性を活かしたメディアプラニングを行っていくことが大事になります。
